今回は、セミナーでのアンケートでも多くご要望を頂いた、グローバル教育が提供される学校について、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate 以下IB)という視点で紹介をしていく。
1月のセミナーでゲスト登壇を頂いた国際教育評論家の村田学(ムラタ マナブ)氏によると、「日本におけるインターの数は確実に増えている。当然、通っている日本人家庭の子も増えている」とのことである。
過去、ボーディングスクールや海外の現地校で学んでいる生徒の体験談をテーマに実施したセミナー内で頂いたチャットやアンケートからも、「グローバル教育」についての保護者の関心が高いことが伺うことができた。
可能であればボーディングスクール、インターナショナルスクールに通わせたいと考える保護者様も多い一方で、離れて暮らすことへの不安感や費用面などの理由により選択肢に入れられないこともあるだろう。
また、一口に「インター」と言っても、日本国内での位置づけは様々であり、学校教育法に定められ、日本の学習指導要領に基づいて教育をする「一条校」でない学校の場合は、その後の進路が制限されてしまうのではないか?という心配の声もある。
しかしながらIBにより日本国内の大学を含め、世界中の大学への入学資格を得ることができる。世界共通のプログラムのため、教育途中で他国に移動する可能性がある場合も、IBを提供している学校に転校すれば、教育の一貫性を保つことが出来ることもメリットである。
セミナーでも紹介があった広島県立広島叡智学園 中学校・高等学校のように、県立(公立)の中高でもグローバル教育を享受することが可能である点は、進学先の選択肢が大幅に広がることに繋がるため、教育設計には必須の情報である。
こうした背景もあり、今回は「IB」について紹介をしていく。
IBとは
IBは、1968年にスイスで発祥した、チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムである。
世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置された。
令和4年5月時点、世界159以上の国・地域、約5,500校に通う生徒がこのカリキュラムで学んでいる。
一言で表すと、進学における世界共通のパスポートである。
IBプログラムでは、「国際的な視野」をより明確な言葉で定義づける試みと、実践を通じてその理想に近づこうとする努力を、IB認定校の使命の中心として位置づけている。
具体的には、IB認定校が価値を置く人間性を、以下10の人物像として表している。
・探究する人
・知識のある人
・考える人
・コミュニケーションができる人
・信念をもつ人
・心を開く人
・思いやりのある人
・挑戦する人
・バランスのとれた人
・振り返りができる人
これらをまとめると、英語力に加え、リーダーシップ、企画構想力、感性を兼ね備えた人材が育まれるプログラムといえる。
実際の結果を見ても、イギリスでは大学入学資格として認められているA level取得者に比べてIB取得者が国内トップ20校に進学する割合が多くなっているというデータもある。
また、アメリカでも、IB取得者は米国主要大学への合格率も最大で約40%程高くなるというデータもあり、海外のトップレベルの大学進学を考える際は、IB認定校への進学という選択肢は外せないだろう。
ただし、ここで知っておくべきことは、IBの前提は良い大学に入るためのプログラムではないということである。
私見ではあるが、学科の勉強以外の様々な取り組みが総合的に人間力を鍛え、将来への志(社会と関わる力)が育まれることで、結果として上記のような結果に繋がったと考える。
※A levelについて補足すると、IBよりもメジャーな資格であり、好きな科目や深く学びたい科目のみを選択することができるカリキュラムであるので、IBとどちらを優先すべきかは、個人の特性に応じて判断が必要となってくる。
IBプログラムについて
●PYP (Primary Years Programme):3-12歳
精神と身体の両方を発達させることを重視したプログラム。
●MYP (Middle Years Programme):11-16歳
青少年に、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム。
●DP (Diploma Programme):16-19歳
所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能。
原則として、英語、フランス語又はスペイン語で実施。
日本における認定校は、文部科学省IB教育推進コンソーシアムHPより確認が可能である。
MYPとDPの認定校について筆者が住む東京都を例に一部抜粋により紹介すると、
私立中高一貫校では
都立高校として、東京都立国際高等学校
高校入学が可能な私立高校として、武蔵野大学附属千代田高等学院(日本語DP)
などが挙げられる。
なお、日本語DPとは、IB推進のために一部の授業を除き多くの授業を日本語で行うプログラムである。
グローバルに活躍できる力を身につけさせたいと考える保護者は、国内進学での学校探しで悩んだ際には、こうしたIB認定校をまず検討してみてはいかがだろうか。
IBのメリット・デメリットを整理
●メリット
①海外の大学入学資格を得ることができる
IBの最大の特徴は、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験で所定の成績を収めることで、国際的に認められた大学入学資格が取得できるという点である。
世界的にも有名なハーバード大学やオックスフォード大学、ケンブリッジ大学など世界のトップ大学も入学資格として認めており、日本の学校に通いながら世界基準の大学への入学資格を得ることができる。
また、IBDPの最終スコアによっては、アメリカやイギリスのトップ校はもちろん、世界で100ヵ国以上の大学での入学資格となり、カナダやオーストラリア、ヨーロッパ、アジア諸国の世界大学ランキング上位の名門大学への進学も可能になる。
②英語力の向上が期待できる
IBDPの授業は原則として英語などの言語で行われることとなっており、日本語DPの場合でも2科目は英語での受講となる。
この2科目に関しては基本All Englishでの授業となり、教科書も英語で記載されているものを使用するため、英語に触れる時間は必然と多くなり、日本語DPでも英語力の向上が期待できる。
●デメリット
①学費が高い
IB導入校はインターナショナルスクールや私立校が多いため、相対的に学費が高くなる。
しかし、上に述べたように公立の学校でもIB認定校は増えてきてはいる(と言ってもまだまだ少ないが)
②認定校の選択肢が少ない
実際の認定校の数は以下の通りである。
MYP: 認定校34校 候補校8校
DP :認定校66校 候補校3校
※令和4年12月31日時点
認定校の数が圧倒的に少ないこともあり、選択肢に限りがあるため、自宅の近くにない場合は「時間をかけて通う」というケースも多くある。
③一般的な大学ルートが難しい
国内大学については、IBを活用している大学がまだまだ少ないことは事実である。
とは言え、今後増えてくることが想定されている。そもそも日本で学びたいという海外の学生を増やすためには、IB活用は大学にとっても必要不可欠である。
IBを活用した入試制度がある大学はこちら
以上、今回はIBの概要、認定校、メリット・デメリットについて紹介させて頂いた。
後日の記事では、DP 16-19歳を対象とするDP(ディプロマプログラム)について、日本の総合的な探究との違いを合わせて紹介をしていく。
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